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荒巻 能史
JAERI-Research 99-007, 22 Pages, 1999/02
原研むつ事業所は、平成9年4月に加速器質量分析装置(AMS)を設置した。当装置は、C/Cの精密測定が可能である。そこで本研究室では、AMSによる海水中のC測定のための前処理法を新たに開発した。海水中のCを測定するためには、(1)溶存している無機炭酸を二酸化炭素として抽出、(2)その二酸化炭素をグラファイトに還元する、の2つの行程が必要である。従来法では、作業が複雑なうえ、一試料あたり40分程度の時間を要した。新たに開発した方法では、(1)について、処理時間が2分の1以下に短縮されたうえ、回収率も向上し、(2)については、従来法の一部改良により簡便な作業が可能となった。
桑原 潤
no journal, ,
青森研究開発センター大湊施設に設置している加速器質量分析装置(AMS)に関して、装置の原理、AMSの特徴、AMSを使った考古学における年代測定及びAMSによる成果について解説する。
永井 晴康; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 太田 雅和; 永野 博彦
no journal, ,
アジア原子力協力フォーラム(FNCA)気候変動科学プロジェクトにおいて、土壌有機物分析による炭素循環研究を実施している。土壌の有機物は微生物によって分解されCOが大気中へ放出されているが、温暖化による気温の上昇は、微生物による土壌有機物の分解を促進し、土壌からの炭素放出量を増大させ、さらなる温暖化を引き起こす可能性がある。したがって、地球環境の将来を予測するためには、土壌に蓄えられている炭素が温暖化によってどうなるのか、つまり土壌有機物の分解性を明らかにする必要がある。本研究では、土壌有機物の分解性を調べる方法として、加速器質量分析装置により放射性炭素を測定し、年代測定の原理で有機物がどれだけ古いか、つまり、どのくらい分解しにくい状態なのかを調べる手法を用いている。FNCAの国際共同研究により本手法をアジア諸国に展開し、温暖化に対する土壌有機物の応答に関する情報を地球規模で取得することを目指している。
鈴木 崇史
no journal, ,
海水中の放射性物質の濃度を測定するためには大量の海水試料(数十L程度)を必要とするため、福島第一原子力発電所事故後、大量の海水試料を採取しやすい表面海水中での放射性物質の濃度については多数の報告例があるが、大量の海水試料を採取しづらい鉛直方向における放射性物質の濃度については報告例が少ない。加速器質量分析装置は少量の海水試料(1L程度)から高感度でヨウ素129の濃度を測定できるため、この特徴を活かし、福島第一原子力発電所事故後の、西部北太平洋における親潮,混合及び黒潮海域において海水中のヨウ素129濃度の鉛直分布を明らかにした。福島第一原子力発電所事故で放出されたヨウ素129は、親潮及び混合海域においては表層混合層内に存在していたが、黒潮海域では表層混合層内には存在せずに、表層混合層以深に存在していた。表層混合層以深への事故起因ヨウ素129の移行過程は、黒潮続流の蛇行により、この流れに引き込まれるように混合海域の海水が南下し、黒潮続流の下層に潜り込んだため生じたと考えられる。